この章には、代表的とも言える傑作の童謡が散りばめられている。「露」「夜」「世界中の王様」「繭とお墓」「明るい方へ」「月と泥棒」「さみしい王女」「博多人形」「蜂と神さま」「ぬかるみ」「金魚のお墓」などなどで、目新しいところでは、自家版同人誌薔薇(SOBI)に「水すまし」が掲載されただろうとの仮説も打ち出している。
仏蘭西に行っていた西条八十が帰国したものの、有力な投稿雑誌が廃刊になったり、宮本との結婚生活があまりうまくいかなかったりの波乱の中で、大きなよろこびは娘の誕生だった。
水すまし
一つ水の輪、一つ消え、三つまはれどみな消える。
水にななつの輪を描けば、魔法は泡と消えよもの。
お池のむにみ囚はれの いまの姿は、水すまし。
きのふもけふも、青い水、雲は消えずに映るけど、
一つ、二つ、と水の輪は、一つあとから消えてゆく。
博多人形
こほろぎが/ないている/夜ふけの街の芥箱に。
一つ明るい/かざり窓/あおい灯に/博多人形の/泣きぼくろ。
こほろぎが/ないてゐる/街の夜更けの芥箱に。
金子みすゞ 金子みすゞさんのことを書きました。わかれ童謡(うた)追憶のみすゞ
金子みすゞさんが生前発表した100作品を網羅、母と娘のまなざしをも通して生涯を綴る。 金子みすゞの魅力を、力不足を知りつつも書いてみたいと思いました。 仙崎、下関、青海島など取材、著作権があるから勝手にはさせないぞと主張する某出版社の妨害にも負けずに、 A5版220ページの本ができました。 自費製本ですので、応援する意味を込めてご注文願えるとありがたいです。
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