7章 ささやかな願い

病気が進行して、日常生活にも不自由をきたすようになっても、みすゞはまだ病気のことを誰にも明かさなかったが、さすがに母親には隠しおおせるものではなかった。

そんな彼女のささやかなよろこびは、日向で我が子と遊ぶことと、灯影で本を読むことだと自身が母校の通信で綴っている。そして一般的には最後の投稿作品として「夕顔」があげられることが多いが、この後で「繭と墓」が掲載され、死後にも2作品が発表されたことは他の先生方は書いていらっしゃらない。

夕顔

お空の星が、

夕顔に、

さびしかないの、と

ききました。


お乳のいろの

夕顔は、

さびしかないわ、と

いひました。


お空の星は

それっきり、

すましてキラキラ

ひかります。


さびしくなった

夕顔は、

だんだん下を

むきました。


何とも切なくなってくるような童謡詩だが、みなさんはどう思われるだろうか。

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金子みすゞ 金子みすゞさんのことを書きました。わかれ童謡(うた)追憶のみすゞ

金子みすゞさんが生前発表した100作品を網羅、母と娘のまなざしをも通して生涯を綴る。 金子みすゞの魅力を、力不足を知りつつも書いてみたいと思いました。 仙崎、下関、青海島など取材、著作権があるから勝手にはさせないぞと主張する某出版社の妨害にも負けずに、 A5版220ページの本ができました。 自費製本ですので、応援する意味を込めてご注文願えるとありがたいです。