ひとしお愛らしさを増した房枝は、三歳になる頃にはおしゃまなおしゃべりさんになっていた。仕種も可愛らしいが、舌足らずなしゃべり方も愛くるしい房枝の言葉のすべてが、テルにとっては大切な宝物だった。
祖母や母からは「ふうちゃん」と呼ばれるのに、房枝が自分を呼ぶときには「ぶうちゃん」となって音が濁るのは、とがらせた唇の間に少しだけ隙間を作ることができずに、破裂音になってしまうからだと思われるが、それらの全部をひっくるめて、テルはわが子との会話を楽しんでいった。‥‥‥
この章ではみすゞがおさない娘の言葉を書きとめた「南京玉」からピックアップして、母と子のストーリー仕立てにしたが、かなり切ないです。
金子みすゞ 金子みすゞさんのことを書きました。わかれ童謡(うた)追憶のみすゞ
金子みすゞさんが生前発表した100作品を網羅、母と娘のまなざしをも通して生涯を綴る。 金子みすゞの魅力を、力不足を知りつつも書いてみたいと思いました。 仙崎、下関、青海島など取材、著作権があるから勝手にはさせないぞと主張する某出版社の妨害にも負けずに、 A5版220ページの本ができました。 自費製本ですので、応援する意味を込めてご注文願えるとありがたいです。
0コメント